日本へ留学中のインドネシア人インタビュー【東京大学大学院国際保健学部】

現在日本に留学中のインドネシア人大学院生に、日本の大学に留学した経緯などについてインタビューをしました。インドネシア学生の日本留学インタビューの第14弾です。

前回インタビューした東京大学大学院に留学しているディキさんは、インドネシア大学の学士課程を卒業後すぐに東京大学大学院に進学をしましたが、今回インタビューした学生は、同じくインドネシア大学卒業後にインドネシアの医療系非営利団体で4年ほど就業経験をしたのちに、東京大学の大学院に入学をした28歳の若者です。

彼はインドネシア大学で公衆衛生について学び、さらに知識を深めるために来日し、現在は東京大学大学院の国際保健学部に在籍しています。

彼がインドネシア大学を卒業して東京大学大学院に入るまでの経緯や東京大学を選んだ理由、日本へ留学するときに大変だったことやインドネシア人留学生を増やすための提案、そして彼の将来の夢についても語ってもらいました。

インドネシアから優秀な学生を受け入れたいと思っている大学関係者にとっては留学生獲得の大きなヒントになると思います。

→ 東京大学大学院に在学中のディキさんのインタビュー記事

※これは2020年5月にインタビューしたものです。

東京大学大学院に留学したインドネシア人:ジュン(Junaedi)さんのインタビュー

ジュンさんの基本情報

名前:アフマッド・ジュナエディ(Ahmad Junaedi:通称ジュン)
卒業大学:インドネシア大学・公衆衛生学部生物統計学科(Fakultas Kesehatan Masyarakat,Departemen Biostatistika) 2013年卒業
在学校:東京大学大学院 医学系研究科 国際保健学専攻 2019年4月入学
宗教:イスラム教
出身:ボゴール(ジャカルタ郊外)
年齢:28歳

【質問1】最初にインドネシア大学の公衆衛生学部を専攻した理由を教えてください

私がインドネシア大学の公衆衛生学部に入学した理由としては3つほどあります。

1.インドネシアは、公衆衛生についての社会認識が非常に遅れた国です。熱帯特有の感染症などが多く存在しているのにも関わらず、正しい病気予防法や知識が多くの人に浸透していません。そこで私は、病気にかからないようにする予防策と正しい知識を多くの人に届けるという活動の研究をしようと思いました。この分野を担っているのがインドネシアでは公衆衛生の研究です。インドネシア大学でこの公衆衛生学を選んだ理由のひとつです。

2.インドネシアでは公衆衛生の研究分野は他の健康関連分野に比べて、より広範囲で強力なパワーを持っています。例えば医師の場合には、目の前の一人の患者を相手にしますが、公衆衛生は一度にたくさんの人を相手にすることになります。公衆衛生の研究範囲は、地域のコミュニティーが対象になるばかりでなく、社会全体に影響を及ぼす病気などを防ぐ広範囲なものです。今まさにCOVID-19 の感染拡大防止策は、公衆衛生の分野が取り組んでいます。私は、より多くの人に貢献したいという思いからこの分野を選びました。

3.この公衆衛生の分野を研究することで、将来私ができる仕事の範囲が広がると思っています。公衆衛生分野は純粋な自然科学分野ではなく、人文科学分野も研究対象になります。私は自然科学と人文科学の両方の側面から学ぶことで、様々な分野の仕事ができるようになると思いますし、業務にも応用できると考えています。

【質問2】インドネシア大学を卒業してから東京大学に入るまでの経緯を教えてください

2013年8月にインドネシア大学を卒業したあと、2014年からインドネシアのジャカルタにある非営利団体で働きました。アメリカ合衆国に本部がある国際リサーチ・トライアングル・インスティチュート(Research Triangle Institute International)というところで2018年までの4年半ほどを過ごしました。そして、ここでの実務経験があったため、奨学金申請の条件をクリアでき、奨学金の申請と同時に日本の東京大学の大学院を申し込みました。この奨学金の申請に合格したので、2019年の春から東京大学の大学院修士課程に入学できました。

【質問3】国際リサーチ・トライアングル・インスティチュートではどのような仕事をしたのですか?

国際リサーチ・トライアングル・インスティチュート(RTI)では、改善チームに所属し、疾病のモニタリングと改善活動を行っていました。このプログラムは、インドネシア政府の像皮病根絶を支援するためのものです。像皮病については写真を見たことがあるかもしれませんが、皮膚が大きく腫れあがって硬化し、像のような皮膚になってしまうインドネシアなどの熱帯地域に多く見られる病気です。

【質問4】日本の東京大学に留学を決めた理由は何ですか?

私が日本の東京大学に留学を決めた一番の理由は、奨学金が受けられたことです。

RTIに在籍しているときから大学院進学を希望していて、最初はウェーデンの大学に留学しようと奨学金取得の申請をしましたが、認可されませんでした。その後、いろいろと探していくうちに候補にあがったのは、日本の東京大学とオーストラリアの大学です。私の得た情報によるとオーストラリアの奨学金は1年間しか支給されないとのことでしたので、結果的に東京大学に申請することにしました。

東京大学には、私が研究したいと思っていた公衆衛生分野の大学院の研究室がありました。その講義は英語で受けられるので、日本語を長い時間をかけて学ぶ必要がなかったことも理由の一つです。もちろん、東京大学は世界的にも評価が高く、世界中から優秀な学生が集まっています。私の研究グループには七人の研究生が在籍していますが、日本人は一人だけで、他の人はいろいろな国からの留学生です。さらに、私は日本の文化が好きですし、日本で生活することも小さな頃からの夢でした。

もう一つの理由として、公衆衛生に関する自分の知識をもっと深めて、今後のキャリアに生かしていきたいと思ったからです。じつは、東京大学で修士課程を修了したら、長崎大学の博士号プログラムに進学したいといま思っています。長崎大学には、私が特に興味がある熱帯疾患のリンパ系フィラリア症と像皮病に関する研究をしているグローバルヘルス学部があるからです。

【質問5】日本の東京大学に入学するため大変だったことはありますか?

私が日本の東京大学に入学するために大変だったことは、やはり奨学金の申請です。私が申請した奨学金は、アジア開発銀行の日本奨学金プログラム(ADB-JSP)ですが、提出書類が非常に多く、その準備が一番大変でした。

このアジア開発銀行の日本奨学金プログラムの資格条件として、私はすでに4年半程のRTIでの業務経験があったのですが、英語力が少し足りませんでした。そこで、アメリカからインドネシアに来たRTIの上司に協力してもらい、終業後に数か月に渡って彼から英語のレッスンを受けました。結果的には、2回目のInternational English Language Testing System(IELTS)で、奨学金取得に十分なスコアを獲得できました。

また、奨学金の申請に必要な書類を作成や収集については難しいというよりは、多くの時間がかかりました。インドネシア大学の学部長の推薦状や研究についてのエッセイ、業務経歴書、東京大学の教授の入学許可、私の研究計画や企画などです。最終的に私は作成した分厚い書類をフィリピンのマニラにあるアジア開発銀行の奨学金のヘッドオフィスに送りました。そして数か月後、公式に奨学金の取得が認可さたという連絡をもらえました。現在はその奨学金から、学費と日本での生活に十分な生活費をもらうことができていて、本当に感謝しています。

【質問6】先輩として日本留学希望のインドネシア人学生へのアドバイスはありますか?

日本留学希望のインドネシア人学生に対して、先輩としての私からアドアイスとしては、いくつかあります。

一つめは、日本語をよく勉強してください。可能であれば、日本に出発する前に日本語を十分に学んだ方が良いと思います。日本での生活は、ほぼ日本語を使うことになりますし、様々な不文律のルールもあります。日本語を学ぶことによって日本で生活することに戸惑いがなくなりますし、日本人の友人もできると思います。

二つめは、日本にいる人とできるだけ連絡を取ってください。まず初めに、学習したい分野の教授とメールなどで連絡を取り、本当に希望する学習内容と合っているのかを確認したほうがいいです。もしも、希望する学習内容がはっきりしていない場合には、アドミッションの担当の方に相談してもよいかと思います。次に、日本にすでに留学しているインドネシアの先輩や知人に連絡をして、大学の雰囲気や生活に関する話を聞いてください。どんな小さなことでもいいです。とくに「時間を守る」という規律正しい行動については、インドネシアと日本のレベルは全く違うので注意してください。

三つめは、日本留学を諦めないでください。もし、奨学金や入学試験に失敗したとしても、あきらめずに探し続けることで他の奨学金や他の学校に入れるチャンスはあります。「日本留学を諦めない」という強い気持ちを持っていれば必ず道はあります。

【質問7】インドネシア留学生のために日本の大学への要望はありますか?

インドネシア留学生のために日本の大学に要望することは、イングリッシュフレンドリーですね。

もちろん、英語で学位が取得できるプログラムをもっと増やして欲しいですし、大学の手続きのシステムについても英語でできるようにして欲しいと思います。東京大学には他の大学と比べても、英語での授業は多くあり、システムなども英語での対応が進んでいると思います。しかし、インドネシア留学生が興味をそそられる学科の多くは、日本語での授業になっています。東京大学では、学内の掲示物なども英語になっていますが、もっと英語での併記を増やして、日本語がまだ理解できない人にも分かるようにして欲しいです。

【質問8】インドネシア留学生の募集を増やすために日本の学校は何をすればよいと思いますか?

インドネシア留学生の募集を増やすために日本の学校としてすればよいこととしては、いくつか思い浮かびます。

1.学生に分かりやすく詳細に学校情報を伝えてほしいと思っています。大学のアドミッションのスタッフも工夫されているとは思いますが、まだわかりにくいところがあるように思います。例えば、入学や入試の申し込み方法、入学試験に関すること、英語で取得できる学科や授業内容、そして提供できる特別プログラムなどのことがあります。それらの正確な情報を日本へ留学希望の学生に届けるためには、コアとなるインドネシアの政府機関などに協力を要請して、インドネシア全土に行き渡らせる事だと思います。

2.インドネシア国内で開催される留学イベントに出展して情報提供をすることです。これはやはり重要です。留学イベントに出展して正しい情報を直接告知することです。留学イベントや出展する情報を広めるための一つの方法として、日本留学から帰国した卒業生などに協力をしてもらい、彼らのネットワークを活用する方法もあります。いわゆる口コミですね。

3.ソーシャルメディアでの広報です。留学イベントはコロナウィルスの影響で開催できない場合には、ソーシャルメディアを通じて、インドネシア語または英語での情報提供が重要になるでしょう。Zoom会議システムなどを使って、留学希望者それぞれにマッチした学科や奨学金、教育プログラムなどの情報提供できるようになればよいでしょう。インドネシアの提携大学や有名大学などに依頼し、在籍しているインドネシア学生たちに広報や通訳や翻訳などの協力してもらう方法もよいかと思います。

【質問9】あなたの将来の夢は何ですか?

私の夢は、インドネシアの熱帯疾患を撲滅することです。そのためにインドネシアに帰国した後は、インドネシアではまだ数少ない熱帯疾患の専門家としてNGOの技術アドバイザーになりたいと思っています。まずは像皮病の撲滅を目指したい思っています。そして、インドネシア国内の公衆衛生の品質を高めて、病気にならないような正しい予防策を、効率よくインドネシア全土に広めていきたいです。

まとめ

日本の東京大学大学院に留学中のインドネシア人ジュンさんに、日本に留学した理由やその経緯などについてインタビューしました。

ジュンさんは、インドネシア大学の公衆衛生学部を卒業し、インドネシアの非営利団体で社会人経験を積んだ後、現在東京大学大学院の医療系研究科の国際保健学部の修士課程に在籍しています。

インドネシア人留学生のジュンさんが東京大学を選んだ大きな理由は、アジア開発銀行の日本留学の奨学金プログラムが取得できたことです。また、東京大学には、インドネシア大学でも学び非営利団体でも実務経験のあった公衆衛生分野の学科があったこと、授業が英語で受けられること、東京大学で学ぶことは自分の今後のキャリアに生かせることなどを挙げています。

インドネシアにいた時分、当初はスウェーデンへの留学を目指していましたが奨学金の認可が下りず、アジア開発銀行の奨学金に切り替え、奨学金の取得資格である英語をマスターするためのレッスンを受けたり、インドネシア大学の学部長の推薦をもらったり、エッセイの執筆、研究計画や研究の企画を立案するなどの多くの課題をこなして、ようやく東京大学への留学を実現できました。

そしてジュンさんに、日本へのインドネシア人留学生を増やすためにはどうしたらよいか? を尋ねたところ、「分かりやすく詳細に情報を伝えること」「留学イベントの出展」「ソーシャルメディアでの広報」という基本提案に加えて、インドネシアの政府機関などの協力や、大学卒業生のネットワーク活用、インドネシア人学生の協力なども提案してくれました。また、日本の大学には「もっとイングリッシュフレンドリーになってほしい」ということも要望していました。

最後にジュンさんの夢は「熱帯疾患を撲滅すること」で、東京大学での修士課程を卒業した後は、さらに専門的研究を続けるために長崎大学のグローバルヘルス学部博士課程への進学を目指しています。そして、インドネシアに帰国後は、NGOの熱帯疾患の技術アドバイザーになり、公衆衛生の品質を高めながら正しい予防策をインドネシア全土に広めていきたいと語ってくれました。

以上、「日本へ留学中のインドネシア人インタビュー14【東京大学大学院国際保健学部】」と題して、東京大学大学院に留学中のジュンさんのインタビューでした。

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