日本へ留学を希望するインドネシア人の大学生に、日本へ留学を希望する理由などについてインタビューをした第11弾です。今回インタビューした学生は、前回のハエカルさんという大学生のインタビュー記事でもご紹介した、インドネシア大学ランキングで首位、いわゆるインドネシアNo.1大学の「ガジャ・マダ大学」にて考古学を学んでいる学生です。
彼もまた、このガジャ・マダ大学に通いながら日本の大学の大学院(修士課程)への留学を強く希望している24歳の若者です。
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インドネシアのガジャ・マダ大学で考古学の研究に夢中になっている彼は、ガジャ・マダ大学の研究のみならず、さらに日本の大学の大学院へ留学をして考古学研究を続けて行きたいと切望しています。彼の日本留学を切望する理由や、じっさいに日本留学について悩んでいること、さらに将来の夢についても語ってもらいました。
インドネシアから優秀な学生を受け入れたいと思っている大学関係者にとって、留学生獲得の大きなヒントになると思います。
(※これは、2020年5月にインタビューしたものです。)
日本へ留学希望のインドネシア人:ヤキン(Yaqin)さんへのインタビュー
ヤキンさんの基本情報
名前:マウラナ アイヌル ヤキン(Maulana Ainul Yaqin)
大学:ガジャ・マダ大学(Universitas Gadjah Mada)
学科:人文科学部 考古学科(S1)
宗教:イスラム教
出身:バニュワンギ(東ジャワ州)
年齢:24歳
【質問1】なぜガジャ・マダ大学に入学したのですか?
ガジャ・マダ大学に入学したのは、考古学を研究したかったからです。インドネシアには考古学が学べる大学は4つあるのですが、そのうちの2つがインドネシア大学とガジャ・マダ大学にあります。私は東ジャワに住んでいるので、ジャカルタにあるインドネシア大学よりも近いジョグジャカルタのガジャ・マダ大学を選びました。
もう一つの理由としては、ジョグジャカルタには文化遺跡がたくさんあるからです。ここには、先史時代から植民地時代までの古代遺跡が多くあり、私にとって非常に興味深い地域でもあります。
【質問2】日本への留学を希望していますか?
はい、日本への留学を希望してます。ガジャ・マダ大学の学士過程(S1)を卒業したら、修士課程(S2)は日本に留学して考古学研究を続けたいと考えています。
【質問3】なぜ日本へ留学して修士課程を学びたいのですか?
私が日本で修士課程を学びたい理由ですが、まず日本は研究したい国の一つだからです。私の考古学研究において、日本は模範となる国ですし、進歩を続けている社会システムが感じられるからです。ただ、私は日本に住んだことがありませんし、日本のユーチューブ動画を見たり、書籍を読んで日本の歴史を知ったりすることぐらいしかできないのですが、考古学研究の課題として非常に興味がある国です。
インドネシアと日本は、第2次世界大戦後の最悪の状態から立ち上がってきた共通の経験を持っています。しかし、「日本は戦後大きく復興できたのにインドネシアはそれができないのか?」という大きな疑問があります。その答えは、日本人はそれぞれが国を復興しよう、立て直そうというパワーを持っていたからだと思っています。私は、日本人のその根底にある文化自体を研究したいのです。
もう一つの日本で学びたい理由は、日本には古い建物が今なお多く残っているからです。寺院などの多くの古い建物は数千年前も前に木材で建てられたものですね。にも関わらず、現在も壊れずに建てられた当時のまま変わりなくしっかりと残っていますね。これは、同じアジアの他の国からみると非常に驚異的なことです。また対照的に、高層ビルなどの最新の技術を結集したビルもたくさんあります。古い物を残しつつ最新の物とも共存する社会は、今後のインドネシア社会が発展するいいモデルになるとも思っています。
【質問4】考古学の中でも一番学びたいことは何ですか?
私の考古学の分野の研究において日本の大学院で学びたいことは3つあります。
一つめは、遺跡や文化遺産の保護に関することです。インドネシアの多くの古い建物は、長い期間歴史的な評価を受けています。これらの建物について、日本はどのようにして自然災害やその他の攻撃から守ってきたのかということについて学びたいと思います。
二つめは、日本は人文科学的な文化です。建物や文化財もたくさんありますが、日本の考古学への取り組みや社会の仕組み、そして日本人の意識などを学んで、インドネシアに持ち帰りそれらを応用したいと思っています。考古学の基本は、残された過去をしっかりと検証し、過去から学び未来に生かすことだからです。
三つめは、日本には最新のテクノロジーがたくさんあることです。最新技術を考古学に応用し、インドネシアに広めて、インドネシアの人たちにも理解してもらいたいと思っています。インドネシアでは、考古学研究について最新技術を利用していません。新しい発見をして文献として発行しても、図書館の棚に積み上げられるだけで、社会一般にはなかなか伝わらないのがインドネシアなのです。例えば、VRを使った遺跡探検などもまだありませんし、学校での教育に使われることもありません。さらに、最新テクノロジーを使って遺跡を保護する方法も日本で学びたいと思っています。
【質問5】日本で留学を希望する大学はどこですか?
日本留学で希望している大学は名古屋大学です。ただ、他の大学はまだ調べていませんので、変更するかもしれません。
【質問6】なぜ名古屋大学を希望しているのですか?
私が名古屋大学を希望しているのは、考古学について学べる「人文学研究科」があるからです。ここでは、古代の建物を最新技術で保護する方法が学べますし、日本だけでなくアジア諸国の遺跡なども研究対象にしている点が興味をそそるところです。私は、インドネシアに戻った時には、インドネシアの古い建物や遺跡の保護に新しい技術を導入できると思っています。
以前、ガジャ・マダ大学で研究論文を書いているとき、日本の考古学について調べました。そこで名古屋大学の考古学の論文を発見し、それを参照しました。この論文には私が知りたかったことが書いてありました。そのとき、名古屋大学の考古学の研究に興味をもちましたね。その論文には、古代から現代までの東アジアの文化的、地理的研究が書かれてあり、その点で非常に印象的でした。
【質問7】日本の大学の情報はどのように集めていますか?
日本の大学の情報は、じつはまだ何をどうやって集めたらよいか分からない状態です。インターネットに頼ることしかできないでのですが、何を最初に調べればいいのかすら分からないレベルです。先ほど島田さんから教えてもらった日本学生支援機構の存在も初めて知りましたし、英語のプログラムがや文部科学省の奨学金についてもまったくわかりません。おそらくインドネシアの多くの学生が同じような状態なのではないでしょうか。日本への留学について相談できる人すらわからない状態だと思います。
【質問8】英語プログラムを選択する予定ですか?
日本へ留学できるとしたら、おそらく英語の授業による修士プログラムを選択することになると思います。英語のスキルはTOEFLとIELTSを受けていますが、もしかしたら期限切れかもしれません。これもあとで調べてみます。
【質問9】奨学金の申請はしますか?
はい、申請をするつもりです。私にとって留学については、資金が一番のネックになると思いますし、まわりの学生はおそらく奨学金を申請すると思います。海外への留学については、両親にかなり負担をかけてしまうことになるので、奨学金をもらって少しでも両親の負担を減らしたいと思っています。
【質問10】ご両親とは日本留学について話し合いましたか?
はい、私の両親とは日本への留学について話しました。まずは奨学金について、国内外の両方の奨学金を探すように言われました。両親からの具体的アドバイスとしては「イスラム教徒として五回のお祈りを行うこと」「体に気を付けること」「交流する人たちと支え合うこと」「日本の良いところをインドネシアでの将来に生かすこと」「勉強するという初心を忘れず遊び回らないこと」と言われました。やはり、いちばんの両親の心配はイスラム教の義務をしっかりすることだと感じました。
【質問11】最後に、あなたの夢は何ですか?
私の夢は、考古学の研究を通じて、インドネシアの国と民族に有益になるような貢献したいということです。考古学の分野の研究を進めていくことでこれからのインドネシアの発展にに役立ちたいと思っています。
具体的には、インドネシア人に対して、考古学をより身近に感じてもらうために、最新技術を使って交流できるメディアを作りたいです。イメージ的には、考古学のコミュティーを作り、そこで議論したり、VRを使ったバーチャル遺跡の探検などを行うことです。さらに小学生や中学生の学校の授業にも加えてもらって、考古学の楽しさや面白さを伝えていきたいと思っています。
【島田】素晴らしい夢ですね。ヤキンさんの夢が叶えられるように祈っています。
まとめ
日本へ留学を希望しているインドネシア人のヤキンさんに、日本留学を希望する理由などについてインタビューをした第11弾でした。
ガジャ・マダ大学というインドネシアのトップ大学に在校しているヤキンさんは、現在考古学を専攻していますが、さらに日本の考古学の大学院(修士課程)への留学を強く希望しています。日本留学をする理由としては、研究したい国の一つであり、古い建物などの保護について包括的に考古学を研究したいと考えています。
そしてヤキンさんは、日本での考古学の研究を通して母国インドネシアに貢献したいという素晴らしい夢を持っています。しかし、日本への留学について自分が学びたい内容は決まってはいるものの、どの大学に本当に自分の学びたい学科や研究室があるかなどを調べる方法が分からず、相談できる人もなく迷っているようです。
ヤキンさんのようにたまたま文献を見つけたことがきっかけで、名古屋大学を知り、いまのところ名古屋大学が留学希望の候補になっています。
このように、研究論文を公開することも留学生獲得の一助になるのではないでしょうか。
以上、「日本へ留学希望のインドネシア人インタビュー11【ガジャ・マダ大学在校生】」でした。