日本へ留学中のインドネシア人インタビュー【東京国際大学一年生】

現在日本で留学中のインドネシア人学生に、日本の大学に進学した理由などについてインタビューをしました。インドネシア学生の日本留学インタビューの第17弾です。前回は、バンドン工科大学から鳥取大学大学院へ進学し、農学専攻で蘭(ラン)の研究に情熱を傾けるインドネシア人男子学生のガリーさんへのインタビューでした。今回は、インドネシア全国統一試験(UN)で全国第4位の国立イスラム高校学校を卒業し、東京国際大学に留学、国際関係学部に在籍するインドネシア女子学生です。

彼女が日本の大学に留学しようと決めた理由や東京国際大学の奨学金を得るまでの経緯、国際関係学部に決めた理由、そしてインドネシア人留学生を増やすためのアイディアを話してもらい、最後には彼女自身の将来の夢についても語ってもらいました。

インドネシアの優秀校との接点を作りたいと思っている日本の学校とその関係者、そして優秀なインドネシア学生をよりたくさん受け入れていきたいと思っている学校および学校関係者にとって学生獲得の大きなヒントになると思います。(※これは、2020年7月にインタビューしたものです。)

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鳥取大学大学院に在学中のインドネシア人学生のガリーさんのインタビュー記事
日本へ留学中のインドネシア人インタビュー16【鳥取大学大学院生】

東京国際大学に留学中のインドネシア人:イタ(Ita)さんのインタビュー

イタさんの基本情報

名前:イタ・ヌルジャナ(Ita Nurjanah)
卒業高校:国立イスラム高校・インサン・チュンデキア・スルポン 人文学部専攻(MAN Insan Cendekia Serpong,jurusan IPS) 2019年卒業
在学校:東京国際大学国際関係学部
宗教:イスラム教
出身:ジャカルタ
年齢:19歳

【質問1】なぜ日本に留学したいと思ったのですか?

私が日本へ留学したいと思ったのは、直接東京国際大学から奨学金のオファーがあったからです。そして日本には素晴らしい文化があり、インドネシアと比べて最新テクノロジーが発達していることも日本に留学してきた理由です。高校在学中に東京国際大学の特別奨学金(TIU特別奨学金)というプログラムに合格し、4年間の授業料がすべて無料になりました。日本の大学に通う学費が無料になったことは大きな決定要因です。

【質問2】卒業した国立イスラム高校から日本へ留学した学生は何人いますか?

国立イスラム高校・インサン・チュンデキア・スルポンの私の学年は、全員で142人いて、そのうち日本へ留学する生徒は8人前後でした。海外へ留学を希望する生徒のなかでも、日本への留学は一番人気があります。アメリカやカナダなどの大学に進学する人もいました。

【質問3】どのようにしてTIU特別奨学金を得ましたか?

私がTIU特別奨学金を得られたのは、私の高校(国立イスラム高校・インサン・チュンデキア・スルポン)と東京国際大学との間に協定関係があり、その学校間協定に基づき4年間の授業料が100%減額される奨学生に選ばれたからです。まず、私の高校内での選考で3人が選出され、在学中の成績や参加した研修などの経験、レポート、担任の先生による推薦状で評価されます。その後、ジャカルタにある東京国際大学の事務所でインドネシアの協定校から選ばれた学生たちが集まり、インタビューがあります。

そのインタビューによって、それぞれの協定校から各1名づつ授業料が100%免除される学生が選出されます。幸運なことに私のインサン・チュンデキア高校からは、私がTIU特別奨学生に選ばれました。

【質問4】TIU特別奨学金の情報はどうやって得たのですか?

TIU特別奨学金についての情報は、ジャカルタにある東京国際大学事務所の担当者の方が私の学校に直接来られて、特別奨学金についてのプレゼンテーションがありました。私は日本への留学に興味があったのでそのプレゼンテーションに参加し、TIU特別奨学金のことを知りました。さらに、担任の先生からの勧めもありました。

【質問5】なぜ東京国際大学の奨学金に決めたのですか?

私が東京国際大学の奨学金を選んだのは、高校在学中に東京国際大学のオファーがもともとあり、試験に合格したからです。じつは、TIU特別奨学金を申し込む前に、日本語留学試験(EJU)を受けていたのですが、日本語の勉強はあまりしていなかったので、合格点には達しませんでした。高校時代に英語はできていたのですが、TIU特別奨学金に申し込んだものの、私も両親も本当にTIU特別奨学金がもらえるとは信じていませんでしたが、東京国際大学から試験に合格した連絡を受けたので、すぐTIU奨学金に決めました。

以前から、日本の文部科学省や三井物産の奨学金プログラムもあることは知っていたのですが、これらの奨学金は選考基準が高く、競争率も高いこともあって申し込んでいませんでした。ただ、TIU特別奨学金は授業料は無料になるのですが、日本での生活費については自費になるので、来年からはアルバイトをしなければならないと思っています。そのためにも、日本語をこれからしっかり勉強したいと思っています。

【質問6】国際関係学部を選んだ理由を教えてください

私が国際関係学部を選んだ理由は、多くの国や人を知ることで新しい文化やその関係について学べると思ったからです。私は以前から旅行が好きで、旅先で色々な人と接することで新しい考え方や新しい文化を知ることが好きでしたが、とくにその国の文化や教育分野において国家間のつながりや関係をもっと学びたいと思いました。

さまざまな人々に貢献しているユネスコ(UNESCO)や国際連合開発計画(UNDP)などの国際連合傘下の団体や、非政府組織団体で将来は働きたいと思っています。そういう理由から国際関係学部を選びました。

【質問7】日本に来てから気が付いたことはなにかありますか?

私が日本に来てから気が付いたことはいくつか挙げられます。

一つ目は、日本の夏はすごく暑いと感じました。日本はインドネシアより涼しいと思っていましたが、初めて日本に到着した時は夏だったので、東京の夏は蒸し暑くてびっくりしました。

二つ目は、日本の街はどこに行っても、すごくきれいで整理されていて、ジャカルタとは全然違っていました。それに、日本人はきちんとルールを守っていることにも驚きました。

三つ目は、日本はテクノロジーが発展していますが、伝統的な文化もきれいな状態で残されていることです。以前、埼玉県の小江戸川越に行き、たくさんの蔵造りの街並みや、お菓子屋横丁、アーケード商店街を散策しました。あとで知ったのですが、今住んでいる場所から小江戸川越はそれほど遠くないことがわかったので、もう一度行ってみたいと思っています。

四つ目は、私の住んでいるところは少し寂しい場所です。ジャカルタでは人がいつもたくさんいるのですが、私が今住んでいるところは夜の8時ごろになると外を歩いている人がほとんどいなくなります。また、お年寄りも多い街ですね。

五つ目は、日本人はフレンドリーな人が多いと思います。だた、大学内での友人や日本人学生はものすごくフレンドリーなのですが、街なかを歩いているときや電車の中では、私がヒジャブをしているせいか、少し注目されているようにも感じることはあります。

【質問8】東京国際大学に入学してから良かったと思う点はありますか?

東京国際大学に留学して来て良かった点としては、選択した学科で希望した学習ができていることです。国際関係についてや、それぞれの国の文化の違いを理解できる講義やセッションは非常に勉強になります。また英語の授業であれば、建築学などの他の授業も履修でき、講義を聴くことも出来るので、自分の視野を広げることにもつながっています。

もう一つの良い点としては、東京国際大学にはイングリッシュプラザと日本語プラザという集まりがあり、日本人も含めて多くの国の人と出会い、友達が出来たことです。イングリッシュプラザでは、どんな国の人でも英語で話すことが義務づけられていて、英語力の向上に役立っています。カフェのような施設があり、そこで英語でのディスカッションや勉強もできます。さらに、季節ごとにイベントがあり、ハロウィーンやクリスマスパーティーなども開催されます。日本語プラザは、イングリッシュプラザの反対で、日本語のみで話すことになっています。ここでは、インストラクターとして日本人学生が日本語を教えてくれたり、フリートーキングもできますので、私もできる限り参加して、日本語の上達を目指しています。

【質問9】日本で大学院への進学を希望していますか?

まだ今の時点では日本の大学院に進学するかどうかはまだ決めていません。できれば英語圏でより高い学位を取得したいと考えています。カナダまたはオランダなどのヨーロッパの国々などです。その理由としては、日本語をまだ習得していないからです。大学院で学ぶには、高度な日本語が必要ですので私がそのレベルまで上達できるかどうか自信がまだありません。しかし、日本での大学院進学をあきらめているわけではありません。また、経済的な理由でインドネシアの奨学金であるLPDPやEU諸国連合のエラスムス奨学金制度も取得したいと思っています。

【質問10】先輩として日本留学を希望しているインドネシアの学生へのアドバイスはありますか?

まだ日本に留学してきて短い期間ですが、先輩としてのアドバイスとしては3つあります。

一つ目は、日本に行く前に日本語をできるだけマスターしておくべきと思います。少なくとも基本的な日本語会話はマスターしておく必要があります。英語での授業であったとしても、日本で生活するには絶対に日本語を使わなければなりません。さらに、アルバイトをしたり、日本人の友達をつくるには日本語が必須だからです。

二つ目は、日本に行く前に、インドネシアの好きな食品を持ってきたほうがいいと思います。例えば、インドミーやサンバル、チャベの粉末などです。その理由は、日本人の辛さのレベルとインドネシア人の辛さのレベルが全然違うからです。

三つ目は、本当に日本で勉強したいと強く思っているかどうかをもう一度自問自答したほうがいいと思います。日本留学がトレンドだからとか、カッコいい日本で生活してみたいだけでは、日本という全く異なる言語の国で、両親から遠く離れたところで一人で暮らすためには、強いメンタルが必要です。必ずカルチャーショックはあります。もちろん何を学び、何をしたいのかもはっきりしておくことも大事です。

【質問11】日本への留学生を増やすために日本の学校は何をすればいいと思いますか?

私は、インドネシアからの学生を増やすために日本の学校は、もっとプロモーションをするといいと思っています。まずは、日本の大学とインドネシアの学校との協定関係を結び、さらにインドネシアの学校間のネットワークを利用して、より多くの学校へと関係を広げていったらいいと思います。実際のプロモーションは、日本の大学紹介や講義内容などについてセミナー形式で行うことが良いかと思います。もちろん奨学金制度を準備できれば良いかと思います。学費や生活費などの奨学金が増えることによって、日本の学校に進学するインドネシア人が増えると信じています。

やはりインドネシアの若者にとってもソーシャルメディアを使っての宣伝効果は大きいと思います。インスタグラムやフェイスブックを活用して、興味深い内容を掲載することで、日本の大学にリーチしやすくなります。

【質問12】あなたの夢は何です?

近い未来の夢は、国連の傘下にあるユネスコ(UNESCO)や国際連合開発計画(UNDP)、または国際的な非政府組織などて働くことです。そこで経験を積んだ後、将来的に私は教育と人材開発に特化した非政府組織を立ち上げたいと考えています。その理由として、私は他の人を助けたいし、人類に貢献したいからです。インドネシアも含まれますが、まだまだ多くの国において、子供たちが十分な教育を受けることが出来ていません。少しでも多くの子供たちを助けたいと思っています。私の夢までの道のりはまだまだ遠いのですが、私はこの夢に向い、戦い続ける覚悟があります。

まとめ

日本の東京国際大学に留学中のイタさんというインドネシア人女子学生に、日本へ留学した理由や経緯などについてインタビューをしました。イタさんは、インドネシア全国統一試験ランキングで第4位の国立イスラム高校・インサン・チュンデキア・スルポンを卒業し、現在は東京国際大学の国際関係学部に入学しました。

彼女が東京国際大学を選んだ理由は、彼女の通っている高校との間に協定関係があり、4年間の授業料が無料になるという東京国際大学特別奨学金(TIU Special Scholarship)に合格したからです。このTIU特別奨学金は協定校の中から一人だけが選ばれるという難関を突破したエリートと言えるでしょう。

彼女が通う東京国際大学には、イングリッシュプラザと日本語プラザがあり、英語と日本語の習得に力をいれていて、彼女にとっても友人が出来たり、英語、日本語をマスターする場があってよかったと思っています。しかし彼女自身はまだまだ日本語能力に不安があるので、日本の大学院に進学するかどうか決めかねています。

さらに彼女からの日本留学を希望するインドネシア学生へのアドバイスとしては、日本語をマスターすること、好きなインドネシアの食品を持ってくること、軽い気持ちで日本への留学を決めないほうがいいと言っています。さらに、イタさんとしてインドネシア人の日本への留学生を増やすアイディアとして、プロモーションを頻繁に行うことを挙げています。その際には日本人が直接インドネシアの学校を訪問してセミナーを催したりすることがいいのではないかと提案しています。また、ソーシャルメディアを使った宣伝も効果大だと言っています。

最後にイタさんの夢は、ユネスコ(UNESCO)や国際連合開発計画(UNDP)で経験を積み、自身の非政府組織を立ち上げることです。以上、日本へ留学中のインドネシア人インタビュー17【東京国際大学一年生】でした。

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