インドネシア教育文化省より依頼を受け、2019年9月29日~10月11日の間、JAPAN STUDY PASS協会は、インドネシア政府教育文化省・事務部人事局の方々10名と在日インドネシア大使館スタッフ2名の合計12名を宮城県の東北大学を中心に研修アテンドしましたので、その様子をレポートします。
今回のインドネシア政府教育文化省の研修目的は、日本の「人事システム」について学び、インドネシア政府教育文化省内の人事評価や人員配置、そして人事システムにそれを生かそうとするものでした。さらには、東日本大震災からの復興状況の視察の一環で、宮城県と仙台市・気仙沼市・多賀城市・富谷市における人事システムについても知見を得るものでした。日本と同じように災害大国であるインドネシアにとって、非常に示唆に富んだ研修プログラムでした。
具体的には、宮城県の各高等学校、小学校、現地企業などの人事システムの現場視察も研修内容に加えたり、宮城県庁を訪問した際には、宮城県最大の発行部数新聞である河北新報社よりその研修の様子を取材されました。
翌日(2019年10月3日)の朝刊にその様子を写真入りで紹介されました。
在日インドネシア大使館を訪問(9月30日)
インドネシア政府教育文化省事務部人事局の研修メンバー10名は、9月29日に羽田空港に到着し翌日9月30日に、東京の五反田にある在日インドネシア大使館を訪問しました。このインドネシア大使館にて、インドネシア政府教育文化省・教育部門長であるアリンダ氏と今後の研修日程について詳しく説明し、その後、宮城県仙台市に移動しました。
インドネシア政府教育文化省・教育部門長のアリンダ氏とは、以前からインドネシア政府教育文化省主催の職業高等学校の先生方の研修アテンドした際にもお世話になった関係です。
東北大学大学院を訪問(10月1日)
東京から宮城県仙台市に移動し東北大学を訪問しました。ここ東北大学では、大学院文学研究科の木村博士より日本の文化・宗教感についての講義を受けました。「日本人の多くは単一の宗教を信仰しているわけでなく、年末年始や結婚式などに顕れているようにいろいろな宗教が融合している国だ」という話には、研修メンバー一同が非常に興味を持っていました。
そしてその午後には、同じく東北大学大学院研究科長の森本教授より、東北大学内の人事システムについての講義及びディスカッションを行いました。
仙台子ども体験プラザと宮城県庁・仙台市役所を訪問(10月2日)
東北大学への訪問の次の日の10月2日は「仙台子ども体験プラザ」を訪問しました。仙台子ども体験プラザは「仙台自分づくり教育」施策のフラッグシップ施設で、未来の創り手となる力を育み出すことを目的として、人や社会との関わりを体験できる体験型学習施設でもあります。研修メンバーからは「インドネシアにもこのような施設が欲しい」との声があがりました。
午後には、宮城県庁を訪問し経済商工観光部の小谷野国際経済・観光局長より表敬を受けました。その後、人事担当者様より宮城県の人事システムの聴講と意見交換の時間を持ちました。
さらにその後、仙台市役所を訪問し、仙台まちづくり政策局の千代谷主査より人事システムについて聴講及びディスカッションを行いました。
気仙沼市の地元企業との意見交換(10月3日)
企業における人事制度の研修の一環で、気仙沼市の株式会社菅原を訪問しました。この企業はインドネシア技能実習生を多く受け入れていて、日本語のレベルや資格取得をすると基本給が上がるという昇給システムを採用しているとのことです。
また、昼食には気仙沼港にあるインドネシア料理店で日本のインドネシア料理を楽しみ、食後にその店の敷地内にあるイスラム教の技能実習生のために新設した「お祈り部屋」で、メンバー全員お祈りをすることができました。
研修メンバーは、まさか日本でインドネシア文化体験できることにとても感激していました。
午後から気仙沼市役所を訪問し、赤川郁夫気仙沼市長と面会、気仙沼市の人事制度についての講演を聴くことができました。気仙沼市はインドネシアとの関係も深く、東日本大震災やスラウェシ島の津波の災害の時には相互支援をしたり、ユドヨノ大統領も気仙沼市を訪れたことがあります。水産業を中心とした民間企業でも、インドネシアからの技能実習生を数多く受け入れています。
その後、気仙沼港近くの株式会社阿部長商店という企業を訪問し、水産食品加工工場の見学及びインドネシア技能実習生との交流を行いました。
東北大学付属図書館見学と意見交換(10月4日)
10月4日には、東北大学川内キャンパス付属図書館を訪問し、3つのグループに分かれて図書館ツアーとライブラリアンの人事制度について、加藤事務部長より講義を受けました。
障害者施設アートインクルージョンスタジオを訪問
10月4日の午後からは、障害者に働く場所を提供しているアートインクルージョンスタジオを訪問しました。アート作品の鑑賞及びダンスの練習風景を見学しました。ダンスの練習のときには研修メンバーも参加して楽しい時間を過ごしました。
インドネシアでは、お国がら障害者を家族が隠している場合が多く、なかなか社会に出てこれないというのが現状です。日本にはこういった施設があることについて研修メンバーは皆感心していました。
SDGs東北、JICA東北の取組みを聴講(10月7日)
東北大学川内キャンパスにおいて、SDGs東北の紅邑様、川出様よりSDGsの取り組みについて講義を受けました。その午後にはJICA東北を訪問し、JICAの活動について講義していただきました。SDGsについて聞いたことがあるものの、内容はよく理解していませんでしたので、私自身も勉強させていただきました。
仙台うみの杜水族館訪問
その後、仙台うみの杜水族館を訪問し、木村館長との面談および水族館人事制度についての講義を受けました。木村館長はインドネシア語を話すことができ、研修メンバー全員と楽しい時間を過ごすことができました。
多賀城市役所を訪問(10月8日)
10月8日には多賀城市役所を訪問し、菊池市長と面談しました。多賀城市における震災復興状況の説明を聴き、多賀城市のシンボルである図書館と書店融合されたパブリックハウスを視察しました。多賀城市訪問につきましては、市議会議員の米澤まき子さんにご協力をいただきました。
午後には、宮城県職業訓練を行っているポリテクセンターを訪問し、技術習得方法と日本企業の人事制度について説明を受けました。
多賀城市高等学校の訪問(10月9日)
多賀城市高等学校を訪問し、英語の授業に参加させていただきました。日本の高校生との交流は、実際の日本の高等学校の雰囲気を感じることができ、大変有意義な時間となったことと思います。
午後には東松山市役所を訪問し、人事システムについて講義を受けました。その後、宮の森小学校を訪問し、地元の木材を使用した素晴らしい学校をみて、インドネシアではお目にかかれない建物に研修メンバー一同感激していました。東松山市訪問については、高橋宗也宮城県議会議員にお世話になりました。
東北大学大学院にて最新IT人事システムの聴講(10月10日)
東北大学川内キャンパスにて、インドネシア人助教授のサミー氏より、ITを使った最新人事システムについての講義を受けました。
午後には、宮城県富谷市を訪問し、西村副市長と面談し、富谷市の人事制度についての説明を受けました。
研修修了書授与式
10月10日に研修終了書の授与式を仙台市内のホテルにて行いました。宮城県庁、東北大学、多賀城市役所、アートインクルージョンの代表の方々にご参列いただきました。短い時間でしたが、より深く交流ができたと皆喜んでいました。
まとめ
インドネシア教育文化省からの依頼により、インドネシア政府教育文化省事務部人事局の担当者と在日インドネシア大使館教育部門スタッフの研修アテンドをアテンドしたときのレポートです。前回のインドネシア職業高等学校の先生方の研修アテンドも含め、インドネシア教育文化省から高い評価をいただきました。
今回の研修内容としては、日本の人事評価、配置、システムを学び、インドネシア教育文化省での人事システムに生かしていただく目的でした。さらに、東北大学、宮城県、仙台市、気仙沼市、多賀城市、富谷市および周辺企業、団体にも足を運び、現地視察とご担当者との意見交換もできました。
とくに東日本大震災からの復興状況や取組み状況についても、同じ震災大国インドネシアにとって非常に有益な情報をたくさん得ることができた様子で、研修メンバーは皆感謝していました。とても有意義な宮城県研修ツアーとなりました。