日本へ留学希望のインドネシア人インタビュー【バンドン工科大学卒業生】

日本へ留学を希望するインドネシア人の大学卒業生に、日本への留学で重視していることなどについてインタビューをした第12弾です。

今回インタビューした学生は、インドネシア理工系No.1大学であり、QS世界大学ランキングでも331位(2020年)にランクインしているバンドン工科大学でビジネス経営を学んだ卒業生です。

彼は、バンドン工科大学で経営学位を取得し卒業したいま、さらに経営についての深い知識を学ぶために日本の大学院への留学を強く希望している24歳の若者です。その彼が、日本の大学院に留学を決意した理由や、進学先の大学院のどの点を重視して選んだのかなどに加え、さらには経営学の視点からインドネシアから日本への留学生を増やす方法についても語ってもらいました。

インドネシアから優秀な学生を受け入れたいと思っている大学関係者にとっては留学生獲得の非常に大きなヒントが詰まっています。
(※これは2020年5月にインタビューしたものです)

他にも優秀な大学を卒業したインドネシア学生のインタビューも掲載していますので、こちらも参考になると思います。
【インドネシア大学卒業】日本留学希望のアウリアさんへのインタビュー
【国立イスラム教大学卒業】日本留学準備中のリズキさんへのインタビュー
【私立キリスト教大学卒業】日本留学準備中のシンディさんへのインタビュー

インドネシアの大学ランキングはこちらです。
日本語学科や日本語プログラムがあるインドネシア大学トップ34校

日本へ留学希望のインドネシア人:ファド(Fahd)さんのインタビュー

ファドさんの基本情報

名前:ファド・ファイカル(Fahd Faikar)
大学:バンドン工科大学(Institut Teknologi Bandung)
学科:ビジネス経営学部・経営学科(School of Business and Management・Business Management)
宗教:イスラム教
住所:ボゴール(ジャカルタ郊外)
出身:マディウン(東ジャワ州)
年齢:24歳

【質問1】なぜバンドン工科大学に入学したのですか?

私がバンドン工科大学のビジネス経営学部に入学したのは、世界の起業家たちに興味があったからです。私自身は、すでに中学生のときから自分のビジネスを始めていました。昔からビジネスには非常に興味があったのですね。そして、より素晴らしい起業家の一人になれるようにビジネスの腕を磨き、その本質と応用について深く学ぶためにバンドン工科大学に入学しました。

インドネシア政府発表の統計によると、インドネシアに住んでいる起業家はたった3.1%しかいません。しかしインドネシアの多くの人が、自分の会社や自分で起業したいと願っているものの、エチェランなどの極小の小売りビジネスに就いてしまうのが実態です。
(*エチェラン:日用品、たばこ、スナック菓子などを販売する移動可能な屋台)

私は大きな夢を持っています。多くの人が働くことのできる「新しい仕事の広場」をここインドネシアに作りたいと思っています。そこでは新しいアイディアや新しいビジネスモデルなどを実現することができ、グループとして大きな企業体に成長させたいと思っています。そしてその結果、多くのインドネシア人従業員を雇用することがインドネシア国全体として失業率を抑えることにもなりますし、インドネシアをさらに発展させることができると思うからです。

【質問2】バンドン工科大学を卒業後は何をしていましたか?

バンドン工科大学を2018年の10月に卒業したあと、私はバンドンで個人向けの小売り販売店を始めました。木製の腕時計や木製の家具などを販売していました。その後、日本に行く機会があり、日本に非常に惹かれました。それから日本留学を決意し、バンドンの店を閉めて日本語を学ぶためにボゴールに戻ってきました。現在は、ボゴールにある日本語学校に通いながら、ウェブサイトやインスタグラムなどを使って、メーカー製の腕時計やガジェットを販売する仕事をしています。

【質問3】なぜ日本留学を決意したのですか?

私が日本留学を決めた理由は、大きく分けて二つあります。

まず一つめは、私は日本のカルチャーと自然の美しさに恋してしまったからです。将来は日本で暮らしたいとも思っています。今から2年前のバンドン工科大学在学中に、日本のアニメやドラマなどを見て、熱狂的に好きになりました。日本の文化の中でも、礼儀作法やにこやかでフレンドリーな人間性、尊敬語や謙譲語などの階層のある日本語が好きです。「すみません」「失礼します」「ありがとうございます」などの日本語によるコミュニケーションや姿勢も素晴らしいと思います。また、日本に行って素晴らしい景色を見て本当に心を奪われました。景観の美しさはもちろんのこと、そこに住む日本人が美しい環境をしっかり守って残していることにも感動を覚えました。

もう一つは、私が小さい頃から思っていた素晴らしい経営者になるためには必要な事だと思っているからです。もっとビジネスについて深く学び、自分のこれからのビジネス経営に応用できるようになりたいと思っています。まず今は、日本語を一生懸命勉強しています。

【質問4】日本語能力試験は受けましたか?

まだ日本語能力試験は受けていません。今年の4月に受ける予定でしたが中止になり、11月の日本語能力試験のN3に向けて勉強中です。しかし、コロナウィルスのためにまた延期になるかもしれません。

【質問5】留学希望の日本語学校はありますか?

日本に留学する日本語学校はまだ決めていません。場所としては東京や京都に惹かれますが、北海道もいいかと思っています。日本語学校を選ぶ条件などはあまりないのですが、できればお祈りの場所があればいいなと思っています。

【質問6】日本語学校を卒業した後は大学に進学したいですか?

私は日本語学校を卒業した後には、日本の大学院に進学したいと思っています。私が学びたいのは、MBAコースです。私が起業して、大きな会社を経営するために必要な知識がそこにあると思うからです。

また、MBAであっても、アメリカではなく日本で勉強したいのは、日本とインドネシアの合致点や相違点をしっかり理解して、教授や同級生などと議論しながら、これからの自分のビジネス経営にも生かしていきたいからです。インドネシアと日本と協力できるようなビジネスモデルを発見したいと思っていますし、日本でもインドネシアのどちらでも起業できるようになりたいとも思っています。さらに、経営を学ぶ中で、ビジネス関連の心理学も学ぶ必要があるかとも考えています。行動心理学やマーケティング心理学と呼ばれるものです。

日本にある多くのMBAプログラムは日本語での授業になっていますので、まずは日本語を学んでから、大学院に進学したいと思っています。もちろん、日本でのビジネスを展開するとしても、インドネシアと日本の協力関係によるビジネスを創るとしても、日本語が必ず必要になるからです。そのため、日本語学校では日本語能力試験でN1を目指したいと思っています。

【質問7】日本の大学院を選ぶとき重視していることは何ですか?

私が日本の大学院を選ぶときに重視していることは、大学のランキング、学部とプログラム、学習環境の3つが挙げられます。

一つめの大学ランキングについては、やはりランキングが高いほうがいいと思っています。より効率的に、より深く学ぶことができ、そこで学んでいる学生のランクも高いと思うからです。インドネシアでは大学のランキング評価をすごく気にする傾向があります。それは、大学側も生徒側にとっても重要なポイントになります。インドネシアが学歴重視の社会ということもありますが、ランキングが高い大学ぼどハイレベルな学生が集まるのは現実です。

二つめは、学ぶ学科のプログラムについてです。私が大学院で学びたいのは、実際に起業するときや企業を運営するときに役立つ実践的な学習です。MBAプログラムでも、理論よりも実践的なビジネス経営について学びたいと思っています。そういった意味で自分にとって役立つプログラムかどうかは大事なポイントです。

三つめは、学習環境です。日本の自然は大好きなのですが、やはり東京や京都などの大都市に学校があるほうが、起業を目指す私にとって有利になると考えています。新しいアイディアや発想はやはり都会の方が流行の発信源になりますし、最新の思考を取り入れることができると思うからです。もちろん、大学自体の研究体制や施設、教授の経験値なども重要な項目の一つです。

【質問8】日本語学校を卒業後に行きたい大学は決まっていますか?

日本語学校を卒業後に進学したい大学は、いくつかあります。京都大学大学院、慶應義塾大学大学院、グロービズ経営大学院大学です。

京都大学大学院は、経営管理教育部 経営管理専攻(Master of Business Administration / Management Course)で、専門職学位課程です。慶應義塾大学大学院は、商学研究科の人事管理(Human Resources Management/Graduate School of Business and Commerce)または、経営管理研究科 MBAプログラム(Graduate Program Keio Business School/MBA Program)です。グロービズ経営大学院大学は、フルタイムMBAプログラム(Full Time Master of Business Administration) になります。

【質問9】この大学院をどうやって探したのですか?

私は、まずインターネットで日本の大学や大学院を探しました。その後、2019年のインドネシアのジャカルタで開催された日本学生支援機構のジャパン留学フェアとジャパンジャカルタ祭りに参加して、これらの大学を知りました。さらに、2019年の秋に日本訪問した時に、京都大学と慶應義塾大学に行って直接話を聞きました。それぞれの学部や学科についての情報を直接聞くことができました。非常に有効なミーティングでした。やはり、直接大学を訪問して、大学の雰囲気を感じ取れたことは、大きな収穫でした。

【質問10】奨学金を申請しますか?

私は奨学金を申請したいと強く思っています。日本の大学の授業料はインドネシアの大学と比較して高いからです。それに、現在の私のマイクロビジネスでは、大学の費用と日本での生活費を支払うことができません。経費支弁者は両親になると思いますので、あまり迷惑をかけたくありません。ですから、奨学金は必ず申請して、学費や生活費の補助をしたいと思っています。

【質問11】経営学の視点からインドネシア人留学生を日本に増やすために何が効果的だと思いますか?

インドネシアからの留学生を増やすためには一番良い方法は、「地方にも届けられるプロモーション」だと思います。私は偶然にもジャカルタ留学フェアなどに参加できたのですが、多くのインドネシア人はこういったフェアには参加することがなかなかできません。知らないこともありますが、もし知っていたとしても地方に住んでいる学生にとっては、開催場所に行くまでの費用と時間がかかるので、結局諦めなければならないからです。

英語のプログラムの存在も広く宣伝することです。多くの大学生や高校生は、「日本留学=日本語が必要」と思い込んでいます。インドネシア人の学生もそうですが、その両親も、日本の大学に英語のプログラムがあることを知りません。実際私もジャカルタの留学フェアに行って、直接大学の方から話を聞くまで知りませんでした。インドネシアでは、中学校から英語が必修科目になっていますし、日常的にも英語を使う場面が多くあり、ネイティブレベルのインドネシア人学生も数多くいます。インドネシア語と英語のアルファベットは全く同じですから、理解しやすいこともあります。ですから、英語プログラムがある大学や大学院には、もっと英語のプログラムがあることをアピールすることが必要だと思います。

もう一つのインドネシアからの留学生を増やす方法としては、インドネシアの大学や高校などとパートナーシップを提携して、交流プログラムを設置し、実行することだと思います。インドネシアの大学や高校は、日本の大学などと提携できれば、インドネシアの学校の宣伝にもなり、より優秀なインドネシア人学生が集まりやすくなります。短期的な交換留学のようなプログラムが実施されれば、日本の大学を知ってもらうだけでなく、学生たちにとっても日本留学モチベーションが高まると思います。

【島田】ありがとうございます。

まとめ

日本へ留学を希望しているインドネシア人のファドさんに、日本留学で重視していることなどについてのインタビューでした。

インドネシアのバンドン工科大学というQS大学ランキングに入っている優秀な大学を卒業したファドさんは、日本語を学び、さらに日本の大学院のMBAプログラムを取得するという日本留学の計画を立てています。

日本留学で大学院を選ぶときに重視していることは、大学のランキング、学部とプログラム、学習環境の三つを挙げています。その中でも、ファドさんは学部のプログラムが重要だと考えています。将来、新しいビジネスモデルを確立して大きな企業を作ることを目指しているからだそうです。

最後に、経営的な視点から、インドネシアからの留学生を増やすためには、地方の学生でも参加できる留学フェアや英語プログラムの宣伝とインドネシアの大学や高校との協定を締結して交流することが重要だと語ってくれました。

インドネシアからの留学生を受け入れる学校としては、ジャカルタなどの都市部だけではなく地方にもしっかりと届けられるプロモーションをしたり、インドネシアの大学や高校との協定を作り交流することが効果的だと彼は考えています。

以上、「日本へ留学希望のインドネシア人インタビュー12【バンドン工科大学卒業生】」でした。

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