インドネシア教育文化省プラタマ氏インタビュー【日本留学は今後増える】

インドネシア教育文化省のジョグジャカルタ考古学分室のプラタマ(Akunnas Pratama)氏に、インドネシア学生の日本留学についてインタビューしました。プラタマ氏は、1年前に在日インドネシア大使館内の教育文化省部門での勤務経験があり、インドネシア国内でも指折りの日本とインドネシアの教育状況、インドネシア学生の日本留学に精通する人物です。

そのプラタマ氏に、日本への留学を希望する学生からの問い合わせの内容や日本への留学で大事なこと、さらには日本留学の問題点、日本の学校に希望することについてインタビューしました。

インドネシアから優秀な留学生をできるだけ多く受け入れたいと思っている学校関係者にとって、非常に有益な情報が得られる内容になっています。

また前回は、インドネシア全土の高等学校とその教職員を管理しているインドネシア政府教育文化省のサンティ教職員育成局長の日本留学支援についてのインタビューも掲載しています。
インドネシア教育文化省サンティ教職員育成局長インタビュー【日本留学支援について】

インドネシア教育文化省・ジョグジャカルタ考古学分室プラタマ(Pratama)氏のインタビュー

インドネシア教育文化省:プラタマ氏の基本情報

名前:アクナス プラタマ(Akunnas Pratama)
宗教:イスラム教
学歴:ジョグジャカルタ・アミコン大学(Universitas Amikom Yogyakarta)
敬称:コンピュータ学士(システム情報学科)
部署:ジョグジャカルタ考古学センター(Balai Arkeologi D.I. Yogyakarta)
役職:インドネシア教育文化省・ジョグジャカルタ考古学分室/技術実行ユニット
出身:ジャカルタ

【質問1】プラタマさんの今の仕事内容は何ですか?

私の仕事は、ジョグジャカルタ考古学センターでIT関連の仕事をしています。具体的には、各セクションの文書管理や情報公開、また全体システムのIT化を実装していく仕事です。インフォグラフィックを使ってソーシャルメディアに考古学の論文などを掲載したり、ビデオなどをつかって情報公開をしています。

【質問2】今後インドネシアからの日本留学希望者は増えると思いますか?

インドネシア全体もそうですが、ジョグジャカルタから日本への留学希望者は確実に増えると思います。ここジョグジャカルタ州には、インドネシア大学ランキングトップのガジャ・マダ大学とトップ10に入っている国立ジョグジャカルタ大学があり、学問の街としてインドネシアでは知られています。高等学校はジョグジャカルタ州内に国立と私立、職業高校の合計で429校あり、高等教育機関としては84校もの大学などがありますので、日本留学を希望する優秀な高校生や大学生も非常に多いです。これからも日本へ留学する学生は増えるでしょう。

→ 日本へ留学希望のインドネシア人インタビュー3【ガジャ・マダ大学学生】

【質問3】日本留学希望者が増える理由は何ですか?

日本留学者が増える理由として、大学のレベル、学ぶ学科、友好関係の3つが挙げられます。

一つめは、レベルが高い大学が日本にはたくさんあることです。そもそもインドネシアの優秀な学生は、インドネシア国内の大学よりも海外の大学を選ぶ傾向があります。また、インドネシアの大学に在学していても、海外の大学や大学院に進学を希望する学生もいます。また、インドネシア教育文化省の新大臣の指針である「教育改革」で、短期留学を推奨しているので、日本留学も含めて海外留学が増えると思います。

二つめは、インドネシアの学生が勉強をしたいと思っている分野の学科が日本の大学にはあることです。世界的にみても先端的でレベルも高く、農業分野、医学や看護分野、防災関係、工業技術分野など、学科の種類も多いからです。これらの分野はインドネシア政府としても、さらに発展を強化すべき分野ですし、学ぶ学生にとっても非常に興味がある分野です。

三つめは、日本との友好関係が構築できるからです。日本には最先端の科学技術だけでなく、アニメやユーチューブなどで日本文化に触れる機会が多くあり、日本との文化交流は友好関係を構築する上でも大切な事です。もちろん私の所属している考古学分野での交流もあります。また、学生にとっても日本の大学教授や友人との友好関係を築くことは、彼らの人生において大きなインパクトになります。さらに、日本の学位取得は学生の誇りになりますし、将来インドネシアの公務員になったとしても、民間企業に勤めたとしても、キャリア形成と昇進に大きく関わってくるのが日本留学です。

【質問4】ジョグジャカルタにおいて日本留学の問い合わせはありますか?

日本留学についての相談は非常に多いです。人数はしっかりと把握していませんが、毎月のように相談が増えている傾向です。とくに、私が日本の研修から帰ってきたばかりなので、多くの人から相談を受けます。相談者は、高校生や大学生ばかりではなく、彼らの両親や学校の先生、市役所の職員からの問い合わせもあります。

【質問5】日本留学についてのどのような問い合わせがありますか?

問い合わせの内容としては大きく分けて「奨学金」「生活費」「ライフスタイル」についての三つがあります。

一つめの奨学金についてですが、この問い合わせが一番多いのですが、インドネシア政府の奨学金は教育資金運用機関(Lembaga Pengelola Dana Pendidikan:LPDP)というものがありますが、これは日本の大学院に進学するための奨学金です。日本語学校や日本の大学(学部)への進学についての奨学金はありません。そこで、日本の政府奨学金や民間の奨学金に頼ることになるのですが、その奨学金を得るための条件や申請方法についての問い合わせが非常に多いです。

二つめに多いのは、日本での生活費についての問い合わせです。日本の物価がインドネシアと比べて高いことは分かっているのですが、実際にはどのくらい高いのか? や、生活費を節約する方法などについて知りたがっています。判断材料として、日本のマクドナルドや牛丼などの値段を教えています。また、節約方法として、住居については友達とルームシェアしたり、食費については閉店間際のスーパーマーケットに行けば、お惣菜やお弁当などが割引になっていたりするというようなことを話しています。

三つめは、日本のライフスタイルについての問い合わせです。日本人のライフスタイルや電車やバスなどの交通手段、自動販売機についてもよく聞かれます。日本人のモラルや時間を守るなどの常識的なルールについても、インドネシアとの違いを説明していますね。

【質問6】日本留学で大事なことは何だと思いますか?

日本への留学で大事なことは、留学費用のこと、日本語、日本生活への適応の3つがあります。

留学費用とは、学費と生活費の両方を考えないといけません。やはり奨学金がもらえるかが大きく影響します。経済的な余裕がない学生は、留学費用のすべてを出してくれる奨学金に頼っているのが現状です。ここ最近では経済的余裕のある家族も増えていますが、学生としては両親に負担をかけたくないと思いがちで、奨学金を申請する人が多くいます。また、奨学金がもらえたということは、優秀であることの証明にもなり、学生自身の誇りにもなっています。

次に大事なことは日本語です。私も日本に行って初めて知ったのですが、ほとんどの日本人は英語ができません。日本人とコミュニケーションするには絶対に日本語が必要です。ましてや大学での講義を理解して、レポートを作成するレベルになるには、高度な日本語を学ぶ必要があります。日本語はなかなか上達に時間がかかりますし、日本語学校に行くとしてもたくさんあるため、どれを選んだらよいのか迷っているというのが現状です。

最後に大事なことは、日本の生活への適応です。日本の人たちは、私たち外国人に対してとても親切で、色々な場面で助けてくれます。しかし甘えてはいけないのが、「時間を守る」ということです。残念ですが、インドネシア人は時間に対してルーズです。日本ではすべてオンタイムで物事が進んでいますので、学校の始まる時間や宿題の提出期限などは必ず守らなければなりません。また、周りの人に迷惑をかける行為などはしてはいけません。例えば、夜中に騒ぐ、ゴミを出す日時を守るなどがあります。また、先生や目上の方に対して礼儀正しくすることもあります。これらのことを日本へ留学を希望する学生に日本での生活のルールとして、前もって知らせておく必要があると思います。

【質問7】インドネシアの学生は日本留学の情報をどこから入手していますか?

日本留学の情報は、ほとんどがインターネットからです。政府機関としては、在日インドネシア大使館やインドネシア教育文化省、日本の文部科学省のホームページがあります。または、国際交流基金や学生支援機構のサイトとそれぞれの大学のホームページを見ることになります。インターネット以外では、留学フェアや各大学が行っているプロモーション会場に足を運ぶことになります。ただ、ジョグジャカルタでの留学フェアなどの留学イベントは首都のジャカルタに比べて少ないですね。

【質問8】日本留学への問題点は何ですか?

日本留学への問題点としては、経済的理由、手続きの複雑さ、相談者がいないという3つがあると思います。

一つめの経済的理由とは、先述のように日本留学の資金が少ない学生にとっては奨学金が必要だということです。ただ実際には、すべての費用を奨学金でまかなえる人はごく限られてくのるで、結果的に日本へ留学ができないという問題が起こります。また、申請をしても本当に奨学金もらえるのかなども非常に分かりにくくなっています。

二つめは留学手続きの複雑さです。留学手続きには、インドネシア国内での書類、在留資格の取得の書類、さらに、日本の学校への申請の3つがあります。インドネシアの政府機関の書類に関しては、定常的な人員不足で、申請してから許可が下りるまでに非常に時間がかかります。また、在留資格の取得のための書類もたくさん必要ですし、最近では在留資格が認可される条件が厳しくなっているので、それぞれの書類をきちんと作成しなければなりません。さらには、日本のそれぞれの大学や学校によって申請フォームが違い、多くの場合はそれが日本語で書かれているので非常に分かりにくいです。英語で書かれていても、学生は理解できてもそのご両親がわからない場合もあります。

三つめは、相談できる人がいないという問題です。日本の学校を決めるときや申請する書類作成など、留学希望の学生にとっては初めてのことばかりですが、総じて相談する人や機関がありません。ジャカルタやスラバヤのような大都市には、国際交流基金や学生支援機構のような事務所があるのでまだいいのですが、地方都市にはそのようなものがありません。日本留学に関する私設の機関があったり、オンラインで相談できるシステムがあるといいと思います。

【質問9】日本の大学・学校に希望することはありますか?

日本の大学や学校に希望することとしては、各種サポートの充実があります。具体的には、生活サポートと法律的なサポート、就職サポートの三つです。

一番めの生活サポートには、イスラム教徒に対する食事のことやお祈り場所の準備や住居、健康管理などがあります。インドネシアはイスラム教徒が多いので、ハラル食品の入手しやすさとお祈り場所の確保が学生たちにとっても重要です。また、断食や服装に関する理解も願いしたいと思っています。住居に関しては、寮またはルームシェアができて、費用があまりかからないようなシステムがあるといいですね。また、健康管理や病気になった際の保険や医療費についてのサポートが欲しいところです。

二番目は法律的なサポートです。差別や嫌がらせなど人道的な支援や様々な問題に対して助言をしてくれる弁護士や機関などのサポートがあるといいと思います。カルチャーショックやアルバイトなどの相談窓口もあるといいですね。

三番目は日本での就職のサポートです。日本の大学や学校に留学したほとんどの学生は、日本での就職を望んでいます。就職のサポートが充実していることが大事な日本留学へのキーになるかと思います。それに、日本の就職のシステムがインドネシア人とっては非常にわかりにくいので、しっかりと説明する必要があるかと思います。

【島田】ありがとうございました。

まとめ

日本での滞在経験があるインドネシア教育文化省のジョグジャカルタ考古学分室のプラタマ(Akunnas Pratama)氏に、インドネシア学生の日本留学についてインタビューしました。

プラタマ氏から、在日インドネシア大使館の教育文化省部門において日本にいたときの経験をもとに、ジョグジャカルタという地方都市に住む学生からの問い合わせ内容や、日本留学の問題や日本留学で大事なことなどを話してもらいました。また、インドネシアの地方にいる留学希望者の視点から、日本の学校に希望する点もかなり具体的に聞くことができました。ハラル食事のことやお祈りの場所や、日本での就職のことです。

インドネシアからの優秀な留学生を受け入れる日本の学校としては、生活サポートや法律的なサポート、就職のサポートなどについても、具体的に提示しておくことがポイントになるかと思います。

以上、「インドネシア教育文化省プラタマ氏インタビュー2【日本留学は今後増える】」でした。

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